長距離バスでアイルランド全島の一周旅行

30代後半の兼業主婦です。20歳になったばかりの頃、アイルランド共和国に語学留学をしました。この国の文化と歴史を大学でも研究していたため、授業以外の時間も出来るだけ有効活用するべく、週末ごとに小旅行を繰り返していました。

その手段は長距離バスです。「Bus éireannボス・エイラン」と言う名のバス会社が、北アイルランドを含め全島の各都市を結ぶネットワークを形成していました。

私は当時、日本でも長距離夜行バスを利用した経験がなかったために、滞在当初は電車で移動しようと考えていました。ですがダブリンの観光案内所で色々と話を聞くうちに、私の興味のある場所へはバスでのアクセスの方が簡易である、とわかったのです。

アイルランドは北海道ほどの面積の小さい国です。首都ダブリンを起点として、遠い町でもだいたい車で4-5時間くらいあればたどり着けます。バスと言う交通手段は、田舎の道路でもどんどん進んで行けますし、新たに線路を開拓するよりもよっぽどリーズナブルな交通手段なのでした。往復切符が、高いものでも3000円くらいだったでしょうか。私は往復切符を購入し、地方都市へ週末のビジットを繰り返しました。宿泊先は安い質素なB&Bか、ホステルです。こうして様々な場所の遺跡や史跡を訪れ、絵葉書がたまっていきました。

また、期間を決めて乗り放題と言う非常にお得なパスがあり、当時2週間有効で200ユーロ(約2万5千円)くらいだったと思います。アイルランド共和国は、電車交通網も発達してはいますが、バスの網羅はその上を行っていました。私は決意してこの2週間パスを購入し、学校が終了したあとの2週間をかけて、全島の一周旅行を敢行しました。一日の走行距離は100キロメートル未満、時間にしてもゆっくり2時間ほどです。日本の夜行バスと違い、お手洗いなどの設備はありませんでしたが、かなり視界のよい広々とした座席です。私は特に、運転手さんのすぐ後ろに座るのが大好きでした。こうして目の前に広がる緑色の牧草地のパノラマ、絶えず変化する水彩画のような空の色に目を染め、いつまでもいつまでも嬉しがっていたものです。

別の時期にアイルランドを訪れた際、一応電車での移動も経験してみました。食堂車やお手洗いなどの設備がありますし、歩いて回れるというメリットはあるものの、速度をほとんど変えずに移動していると、例の緑色のパノラマはさほど
圧巻には感じませんでした。

あの頃、バスを利用してアイルランドを巡り歩いたという経験は今でも私の胸に輝く思い出です。バスだったからこそ抱いた旅情、バスだったからこそ脳裏に焼き付いている風景があり、それが私にとってのアイルランドの姿です。

もう何年も訪れていませんが、子育てがひと段落したら、再びあのボス・エ―ランのバスで、のんびりアイルランドを旅するのが私の夢です。

Write a Reply or Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です